フロムさんの大きなお世話~コミュニティFM編

コミュニティFMについてラジオプロデューサー、フロムさんが色々語っています。

若者とラジオ・9

アルマ・コーガンの「ポケット・トランジスター」という曲をご存知だろうか。
原題を「Just Couldn't Resist Her With Her Pocket Transistor」という。
直訳すると、「トランジスターラジオを持っているあの子を拒むことなんかできないよ〜」という感じか。
イギリスの女性シンガーで、1960年の作品。
日本でヒットしたのは、もう少し後だったと思うが、森山加代子バージョンの方が多分有名だったろう。
ラジオというのは、当時部屋で聞くものだったが、トランジスターラジオが生まれてから外に持ち運べるようになった。
ポケットの中に入るラジオがどれだけ画期的だったかは、今の世代には見当もつかないかもしれない。
何しろ、トランジスターラジオを持っているだけで女の子がもてたのだ。
今なら、ワンセグテレビを持っているようなものかもしれない。
森山加代子の邦訳バージョンでは「毎晩ヒットパレード聞くの」という歌詞がある。
外に出て、月夜の下でヒットパレードを聞けることが、どれだけエキサイティングなことだったろう。
この世界では、ラジオ=若者メディアというのがはっきりしている。
若者は音楽を聞きたい、どこから?ラジオから。
そこには、最新の今まで聞いたことがない曲が流れてくる。
曲にまつわる情報が流れてくる。
それを知らないと、時代に後れてしまう。
ラジオを持つことが勝利者だった時代、そんな記憶が今のラジオに幻想を与えているのかもしれない。
ラジオは、もはやそんな場所に置かれることはないだろう。
若者がカリスマ的存在としてラジオを見ることなど、二度とないのではないか。
ただ、これだけは確かだ。
新しい音楽、魅力的な音楽が、どこよりも早くラジオから流れるなら、若者はラジオに耳を傾けるだろう。
何しろ、ラジオは簡便なのである。
映像のような余計な情報は今はいらない、まず音楽だけ聞かせてくれ、そんなニーズを持つ若者にラジオは支持されるはずだ。
簡便に、タイムリーに、そして一番新しい情報をつけて音楽を流してくれ。
そのニーズは、今もあるはず。
むしろ、ラジオの送り手側が、そんなニーズを感じていないような気もする。
ラジオを作ることだけを考えて、聞く側のニーズに気づいていないというか。
ヒットパレードを作るなら、最高のヒットパレードを作るべき。
ただオリコンのチャートを言うだけではなく、もっと若者に様々なオプションを用意すべきだと思うのだが、実際の現場の方はどう思っておられるのだろうか。