フロムさんの大きなお世話~コミュニティFM編

コミュニティFMについてラジオプロデューサー、フロムさんが色々語っています。

架空インタビュー

今日は、1999年に私が書いたあるコミュニティFMの話「コミュニティFM開局物語」からインタビュー部分を転載することにした。
3セクコミュニティFMについて私が当時感じていたことの一端が表れている。
インタビュー相手は、若井さんという県域FMから出向という設定の架空の人物。
FM7というのがコミュニティFMの名前なのだが、この話途中まで書いてその続きを長く書いていない。
中断したのは、あるところからクレームが入り、個人的に白けてしまったから。
でも、ほとぼりがさめたら又書こうかなと思っているところ。


―若井さんは、もう放送局に入って何年になるんですか。
FM局の開局が70年でしたから、29年になりますね。来年で会社も30周年です。
―30年というと、やっぱりだいぶ変わったんでしょうね。
僕は基本的な部分ではあまり変わったようには思えないのですが、使う道具はだいぶ変わったようですね。例えば、レコードがCDに変わったとか。
―技術革新があったというわけですね。
FMというのは70年代でも最先端の技術でした。AMに比べてスタジオ機器もだいぶ進んでいたような気がします。
―最も変わったと思うのはどこですか。
どこだろう。アナログからデジタルに変わったと言っても、みんなやっていることは大して変わっていないんじゃないでしょうか。
―放送局はあまり変わっていないのですか。
変わったのは、机の上にパソコンが置かれたとか、決済がみんなパソコンで行われるとか、そうそうレコードの検索がカード式からデータベースとかいうのになって、これもパソコンでやりますね。
―番組の作り方は変わらないのですね。
そう思います。機械は、例えばMDとかDATとかオーディオファイルとかになっていますがね。でもマイクもオープンデッキも卓も基本的には変わって無いような気がします。
―21世紀はデジタルの時代と言われていますが放送局は大丈夫ですか。
番組作りのノーハウはあまり変わらないということではないでしょうか。ま、取材はDATやMD、編集をパソコンでやっている若い人もいますが。
―今回、コミュニティFMに出向しようという気になった動機は何ですか。
自分の人生に一区切りつけたかったということです。ずっと制作の世界にいて、アナウンサーなどもやらせていただきましたが、これ以上は進歩がどうも無さそうな気がしたんです。出世もちょっとね。
―じゃ、片道切符みたいなものですか。
会社は何年かしたら本社に復帰させますなんて言っていましたが、ま、儀礼的に言っただけでしょう。私もそのころにはもう定年に近くなりますから。
コミュニティFMに骨を埋めると言う覚悟なんですね。
そんな大層なものじゃありません。正直どんな仕事が始まるのかわからなかったぐらいですから。
コミュニティFMに入って困ったことは何ですか。
困った事だらけです。まず、ここはお役所的体質で、どうも意思疎通がはかりにくい。地位とか権限とか前例とか言われても私にはピンと来ません。
―他には何か?
やはり、組織が小さいから、色々と不便です。一人で何でもしないといけない。前のFM局も創立時、少数精鋭なんて言ってましたが、それでも30人ぐらいはいましたからね。
今は、たった6人です。
―6人で大丈夫ですか。
よくわかりません。コンサルタントが決めたらしいんですが、とにかく予算を考えるとこれでやるしかないんでしょうね。
―一番弱いところは?
技術者がいないので大丈夫かなと思っています。近々技術のわかる制作担当社員を一人雇うつもりでいます。遠藤さんも制作担当らしいんですが、どうも総務も兼務らしくて。
―まもなく開局まで1ヶ月ですが、準備は進んでいますか。
そうなんですよ。そろそろ試験電波も出さないといけないんですが、これはアンテナ会社の人にお任せするしかなくて。それと自動送出なので、コンピューターのソフトもそろそろマスターしないと。
―技術的なものは苦手ですか。
まあ、新しい技術はどうも難しくって。若い人にはあたりまえのことでも僕らにはね。MDなんて全く使い方がわからない。スタジオにはオープンデッキもないし。
―でも覚えるしかないですね。
ま、努力してみるつもりです。それとコンピューターですね。天気予報とか交通情報とかをインターネットで取り込むらしいんですが、どうも使ったことがなくって。やっとワープロ段階ですから。
―何か暗い話ですね。
でも、やりがいはありますよ。会社に来て、お茶飲んで新聞読んで昼飯食ってなんて、単調な生活よりはずっとましです。
―前向きなんですね。番組編成とか、スタッフや出演者の募集とか、やること一杯ありますね。
番組編成は大枠では出来てきたんですか、中味がまだ整わないんです。ディレクターは今までつきあってきた若い人に声をかけたりし始めたところです。出演者は学校を持っているあるプロダクションにお願いしています。
―今までの人脈だよりなわけですね。
でも、電話などもよくかかってきます。オーディションはないですかとか、是非使ってほしいとか。こういった方の面接もしようと思っています。でも、ほとんどが女性。ちょっと残念です。
―男性は不足しているわけですね。何故でしょう。
女性は、自分だけが生活できればいいからでしょう。男は家族を養わないといけないし、こんなちっぽけなコミュニティFMじゃ、金銭的に無理。既存のコミュニティFMも出演者は女性ばかりです。
―ところで、FM7は上手く行きそうですか。
僕は現場なもので、会社の経営はよくわかりません。でも今までのコミュニティFMはほとんどが赤字だということですから、ま、多難だと思います。
―会社の計画ではどうですか。
3年で単年度黒字、10年で累損一掃なんてコンサルタントが言っているみたいですが、何を根拠に、なんて僕は思っています。
―いよいよこれから佳境ですね。とにかく頑張って下さい。
ありがとう。お役にたてるかわからないけど、できるだけのことはしようと思っていますから。

主人公がコミュニティFMに入って一番苦労するのが、役所から出向している局長や総務担当者との対応。
知らないところで役所ペースで話が進んでいき、自分のやり方が一切通らない。
既に決まった方針を変えるようなことは一切させてもらえないため、無駄な作業も仕方なくしないといけなくなるのだ。
役所がいかに、クリエイティブな発想を排除していくか、そのあたりを描写したかったというのが私の意図だったのが、さて続きはいつ書けることやら。


今日の内容、何かよくわからない人もおられるでしょうが、ご寛容ください。