フロムさんの大きなお世話~コミュニティFM編

コミュニティFMについてラジオプロデューサー、フロムさんが色々語っています。

貧者のメディア

前に、ある地方都市で放送業界人の大会があった。
関係者として私も参加したのだが、宿が地元の温泉旅館。
ひとり、部屋でテレビを見ていると仲居さんが入ってきた。
「放送関係の方ですよね。いつも感謝しているんですよ。」とその人は言った。
何のことですか?と聞くと「私はね、天涯孤独の身で、ほんとだったら何も楽しみがないんです。でも、テレビがあるから何とか生きていられる。明日も頑張って働こうという気になるんです。本当にテレビを作ってくださっている皆さんには感謝しているんですよ。」
そうですか、どうもありがとうございます。
私はテレビ関係者ではないが、否定しても仕方がないので話をしばらく合わせていた。
そうか、孤独でもテレビがあれば、この人は生きる希望を見出せるんだ。
多分、ラジオでもそんな人はいるかもしれない。
そういう人がひとりでも、ふたりでも、放送を通じて元気になれるなら、明日も又新しい自分の一日が始まるのだと思えるのなら、ラジオはその人の気持ちを裏切ってはいけない、手際よく部屋に布団を引く仲居さんと話をしながら、心から自戒したことを思い出す。
ラジオって、ある意味「貧者のメディア」なのだと思う。
ラジオなんて安いものだし、電気代もほとんどいらない。
今日食べるものがなくても、ラジオならただで楽しんでもらえる。
今はNHKもラジオの聴取料を徴収しない。
テレビやインターネットは、まだまだ貧者のメディアとは呼べない。
格差社会の底辺を支えるメディアとして、これからラジオの役割は大きくなっていくかもしれない。
そんな社会は願い下げと言う人もいるだろうが、弱者が生きにくい世の中はそう簡単に終わるとは思えない。
政治にそれを求めるのが無理なのなら、ラジオはせめてそういう人たちの声を代弁できるメディアになるべきではないだろうか。
コミュニティFMは、それができているだろうか。
NPO型のコミュニティFMに私がひそかに期待するのは、多分そういった面があるからなのかもしれない。