フロムさんの大きなお世話~コミュニティFM編

コミュニティFMについてラジオプロデューサー、フロムさんが色々語っています。

東中野

東中野の事務所でラジオを聞いていた。
永六輔さんの番組に俳優の沢竜二さんがアウトドアのゲストとして出演。
今、東中野の駅前にいるという。
へえ〜と思って、暑い中ベランダに出て、駅の周辺を見下ろすがそれらしい一団は見えない。
どうも、逆側の出口におられるようだ。
それから、私もよく知っている道をレポーターの方と歩き始める。
ただいま、横断歩道を渡ります、あ、気をつけて・・・。
ーーそうそう、その横断歩道は変則的だから、慣れない車がいきなり飛び出してくるから気をつけてね
この道をずっと行って、サカエ薬局があって、そこを左に曲がるんです。そこに今から40年前に住んでたんですよ。
ーーサカエ薬局ねえ、確かにあるなあ、考えたら薬局ってあまり閉店とか廃業したりしないでずっと同じところにあるけど、やっぱり昔から商売は安定しているのかなあ。
本当にお金がなくってね、質屋通いばかり、でも人情があってねえ、困っていたらとにかく何か持っていったら金を貸してくれた。他の人は一円も貸してくれなかったけど。
ーー質屋はそうだよね。相手が困っているとわかれば損得抜きで金を貸したもんだ。単なる金貸しじゃない、人情も貸していたんだよね。
ここに長屋、貧乏長屋だったけどねえ、あったんだけど、今は・・ないねえ、きれいなマンションになっている・・。
ーー長屋かあ、貧乏長屋って今ないよなあ。そこには共同生活があって、人と人が助け合って生きていた。マンションに人と人との助け合いなんて、ないよなあ。心の通い合いも鬱陶しいという感じだなあ。
でも、ここがあの貧乏な時代を支えてくれたんだよ。東中野のこの町がさ・・・。


ラジオを聞き終わり、私は沢さんが歩いたと思しき道を自分も歩いて見た。
すでに取材の名残も何もなくなっていた。
そして、いきなりの夕立。
私は走り、近くにある東中野図書館でしばらく雨が上がるのを待つ。
雷鳴がとどろき、豪雨が窓を打つ。
ラジオの取材チーム、運よかったなあ、こんな雨じゃ生放送台無しだ。
1時間後、雨がやっと上がり、沢さんがしばらく感慨深げに立ちどまっていたという新開橋に行く。
下に流れるのは、あの有名な神田川
上流でも、とんでもないほどの雨が降ったのだろう。
恐ろしい勢いで濁流が流れていく。
いつもより、2Mも水かさがあがっている。
正直怖い、落ちたらあっという間に200メートルは流されるだろう。
両岸をコンクリートで固められているので、逃げ場もない。
落ちた人のことなど、何も考えていないのがよくわかる。


などと、今日あったことを書いてみた。
こういうラジオ番組って、面白いと思いませんか。
単純なレポート番組じゃなくって、人の歴史というか、心象風景の中にある街を語る番組。
永井荷風が描いた世界を、なぞるような番組とか。
どこにでも人が生きる世界があり、心に響く郷愁がある。
その機微を掬い取ることができれば、人は喜んでその時間をともにするだろう。