フロムさんの大きなお世話~コミュニティFM編

コミュニティFMについてラジオプロデューサー、フロムさんが色々語っています。

ディレクター・2

私がまだ20代の頃、ある優秀なディレクターに会った。
その人は、自分の作った番組で民放連の最優秀賞をとられた方だ。
初対面は、たまたま同じ飛行機でアメリカ西海岸に行った時。
雰囲気は、いわゆる花形ディレクターで、取り巻きもおられて近寄りがたいという感じだった。
典型的なディレクター像、まだ若造の私は心理的反発すら感じたりした。
しかし、その人が作られた番組は確かに鋭い視点から描いたものが多かったのも事実。
業界人とちゃらちゃら付き合う風景とは似ても似つかぬものだった。
その後、たまたまある新聞社で偶然にお会いした。
向こうから見れば、歯牙にもかけないような新米ディレクターの私だったろう。
「おはようございます。」という私に「ああ」とだけその人は言った。
その手には、やや難解な感じのする古文書があった。
「何ですか?その本」
そう聞く私に「いや、新しい番組の材料を探しているんだ」と邪魔くさそうに答えられた。
へえ〜と私。
その本が何の役に立つのかわからない、一体この人はどんな番組を次に作ろうとしているのだろう。
その時に思った。結局優秀なディレクターは、普段読んでいる本が私のような凡庸なディレクターとは違うんだ、と。
ディレクターが誰でも読むような本、参考にするような雑誌で事足れりとしてはいけない。
机の上に不思議な本があり、その世界を確実に自分の作る番組に投影しているディレクター、多分優秀なディレクターとはそういう側面を持った人材でなければならないのではないかと思ったりした。
コミュニティFMの世界も同じだろう。
精神世界に差別化された自分の世界を持つものこそ、クリエイティブな番組を作ることができる。
どこにでもあるような番組なら、コンピューターにやらせればいい。
今なら、相当のことをパソコン一台でできるはず。
あなたでなければできない番組、今必要とされているのはそういうものだと私は思う。