フロムさんの大きなお世話~コミュニティFM編

コミュニティFMについてラジオプロデューサー、フロムさんが色々語っています。

音楽の力・4

「急流」のことは、ずっと気になっていた。
ある時、東京でヨーロッパ担当の東芝EMIの人に会い、そのことについて聞いてみた。
フランク・プウルセルの「急流」だけど、私の知っているのとどうも違うんです。
あの時、流行した「急流」はどこへ行ったんですか?
「ああ、50年代とか60年代はいい加減な時代だったんですよ。例えばイタリアとかフランスで話題になったら、適当に音を押えて帰ってくるんです。もう何でもいい。著作権も今ほど厳しくないし、サンレモ音楽祭の入賞曲とか書いて、シングルで出したんでしょう。今発売されているバージョンと違うとしたら、きっとオーソライズされないまま発売した音じゃないんですかね。」
音源自体が公認されていなかったのでは、というのがその人の見解だった。
確かにいい加減な時代であったことは確かだ。
著作権意識なんて放送局側にもあまりなく、発売されたレコードを自由にかけているという印象だった。
洋楽だけは、番組の最後に「今日使いましたレコードは、セブンシーズ、リプリーズ、デッカ、オデオン、バークレイ、キャピトル、リバティでした。」というコメントを入れればOK、うるさい著作権処理は免除されていたりしたものだ。
ま、そんな時代だから、パチ物の音源を聞かされていた可能性もないかもしれないと思わないでもなかった。
それから又何年かの日々が過ぎた。
私はミュージックバードの立ち上げに奮闘し、その後コミュニティFMとの付き合いも始った。
それは、平成8年の夏のことだった。
私は手伝ってほしいという要望にこたえ、某コミュニティFMの役員の方に会いに行った。
その方は、いわゆるオーディオマニアで、所有されているレコードやCDの数も半端ではなかった。
私がそこそこ音楽に詳しいのがわかると、嬉しそうにライブラリーの説明をしてくださった。
その中に、もちろんフランク・プウルセルの外盤などもあった。
少し聞かせてもらっていいですかと許しを乞い、「急流」をチェックさせてもらった。
だが、どれも違っていた。
いつもの覚えのない「急流」ばかりだった。
で、何気なくCDのフランクプウルセルも手にとった。
東芝EMIから発売されたばかりのベスト盤のようである。
もちろん「急流」も入っていた。
そして、その曲の横に一言だけ但し書きがあった。
(※モノラル)
あっと、その時思った。
そうか、そうだったのか。
急いで、CDを取り出し、私は目にもとまらぬほどの早業でプレイヤーの中にぶちこんだ。(大げさ?)
そして、流れてきた曲、そう、それこそが20年以上も前に慣れ親しんだ「急流」そのものだった。
「急流」リターンズ!
おまえは今迄どこにいたんだ〜!
私は、時を駆ける興奮の中でなにもいわずメロディにしばし耳を傾けたのだった。
(続く)