適正価格(その1)
少し放送局の適正価格というものについて考えてみよう。
テレビの適正価格というのは、比較的簡単な気がする。
視聴率というのが日々細かくデータとして測定されており、それを利用したGRPがその局の適正価格というものを導きだすからである。
クライアントが広告出向する時に指標とするのはGRP(=Gross Rating Point 延べ視聴率)だ。
GRP=リーチ(Reach:到達率)×フリークエンシー(Frequency:平均接触率)
今回の商品のスポットは例えば1000GRPという風に設定する。
簡単に言えば10%の視聴率の時間に100本スポットを打つのである。
それによって、視聴者にどれだけリーチするかが推測できるわけだ。
スポット1本がいくらというより、1GRPがいくらという言い方もできるのだ。
広告による効果というのは、結果としてクライアント側に存在するわけだから、それぞれの局の適正価格というのも自ずと理解しやすいだろう。
対してラジオ局はどうか。
皆さん、ご存知のようにGRPなどというのは存在しないといわざるをえない。
私も営業時代、あまり業界に詳しくないクライアントの方から、ラジオのGRPはいくらですかとよく聞かれた。
テレビ局への出稿がメインだったので、ラジオもGRPで効果を測定できるとお考えになったのである。
しかし、私は丁重に「すみません、ラジオにはGRPという指標はないんです。申し訳ありませんが。」と答えるしかなかった。
もちろん、インチキなGRPは提示できる。
聴取率調査で出てきた数字をそのまま使い、回数でかければGRPもどきが生まれる。
しかし、何ヶ月に1回の聴取率調査の数字を普遍的にデータとして使うのは正確ではない。
だから、大きな代理店はそんな数字を使って広告効果をクライアントに説明したりしないのだ。
何回も書いていると思うが、ラジオの聴取率調査は統計データをとるために実施しているのではない。
ラジオ局が営業的に利用できる資料を作るための材料を得るためにに行っているのが現実だ。
もちろん、適正価格という概念すらラジオ局には存在しない。
売れた価格、それが適正価格と漠然と思っているだけである。
だから、ラジオ局の方法論を踏襲しているコミュニティFM局もまた、適正価格という概念があいまいなのは仕方がないことだろう。
この話、しばらく続けてみたい。